※ ネタバレはありません。未読の皆様、ご安心を。

 

 

 

 

フェル公爵はファンタジーが好きなんです。

学生の時は、ソードワールドやクリスタニアなどのTRPGにもハマりました。

今でも、

グループSNEとか、

安田均、水野良、清松みゆきなんて名前を見掛けると、

心が躍る感じのオッサンなんです。

 

 

 

そんな冒険の日々から引退して久しいんですが、

ここにきて、

真新しくも懐かしい香りのする世界が目の前に現れました。

 

 

是非、未読の皆さんにお薦めしたいので、

これから簡単な紹介を。

 

 

 

 

 

 

 

 

燦然のソウルスピナ

 

著・イラスト : 蕗字 歩

定価 : 972円(税込み)

出版 : 主婦の友社(プライムノベルス)

ISBN : 978-4-07-422847-8

発売日 : 2017/03/17

 

青年アシュレは、「聖遺物」の管理に励む若き聖騎士。ある夜、保管庫が襲撃され、

ふたつの聖遺物が強奪されてしまう。それは美しき夜魔の姫シオンの犯行だった。

アシュレはシオンを追跡するも、辿り着いた廃王国は人外魔境と化していた。

そこで、幼なじみでもあるユーニスと離れ離れになってしまう。

窮地に追い込まれたアシュレが死を覚悟した瞬間、この事件の発端であるシオンと、

土蜘蛛の男イズマに救い出される。一時的に共闘関係を結んだ三人は、

ユーニスを救い出すべく行動を開始するのだが──。いま、若き英雄の旅立ちが始まる。

 

 

 

 

 

奇警にして想起的な世界観が凄い!

 

偉大なる先人たちが築いてきた王道と呼ばれるファンタジーの定義。

トールキンの指輪物語に見られる、

中世ヨーロッパ的な舞台、

妖精やモンスターが登場して、

剣と魔法、それに付随する大きな力による支配、戦争。

 

 

フェル公爵も王道ファンタジーは大好き。

でも、近年はコンピュータゲームの影響もあってか、

「異世界」と云う言葉と共に、ある種お決まりの世界観ばかりが溢れている。

 

 

でも、

 

ソウルスピナの活字の角で脳を殴られた瞬間、

地球以外の星の、別の時間に吹っ飛ばされました。

何処なんでしょう、ここは?

 

 

細部まで入念に計算された、

作者が神となって創造した別の次元にある見たことのない現実。

ファンタジーの楽しさって、

そういう世界に出会うことだったと、改めて気が付かされましたね。

 

 

 

 

 

聖遺物と呼ばれるアイコン

 

良質にして後世に名を遺すファンタジーには、

その世界を象徴する「強大なリソース」が登場することが多いと感じます。

ヴァルハラを炎上させたニーベルンゲンの指輪、

ファイナルファンタジーシリーズにおけるクリスタル、

古代の王族が天空に築いた要塞と飛行石。

 

 

燦然のソウルスピナには、

「聖遺物」と呼ばれる力を持った資源が登場します。

いつ、誰が、

何を目的として造ったのか。

長い歴史の中で、

どのように使われ、そして変遷してきたのか。

 

 

このようなパワーリソースは、

使い方を誤ると、物語の中のガラクタと化してしまいます。

某ロマンシングな物語に登場するディスティニーストーンのように。

 

 

作者の頭の中に構築された破綻のない構想、

そしてこのリソースを華麗に使いこなす技が、

物語をより一層、魅力的なものに変貌させているのでしょう。

 

 

 

 

 

物語と微塵の乖離もない、洗練されたイラストたち

 

 

線の使い方、色の使い方、

装飾品の描き方、表情の見せ方、静と動のアクセント……。

このイラストレーター、描く全ての作品に独特なクセがある。

もはや説明するまでもなく、これがザ・オリジナルというものだろう。

自分の絵を突き詰めた結果、

誰にも真似できないところに到達した、その努力に深い敬意を感じる。

 

 

そして、

ソウルスピナのイラストは、このイラストレーターにしか書けない。

作者の 蕗路 歩 は、

著者の夫とイラストレーターの妻、実の夫婦でユニットを組んでいるから。

こんな大胆であり、

なお且つ繊細な世界を描くには、

距離間のない意思疎通ができないと不可能だと思われる。

 

 

ちなみにフェル公爵は、

平面に描かれた人物の瞳が、

頭蓋骨の中まで丸く存在しているような、そんな描画タッチが特にお気に入りです。

 

 

 

 

 

 

登場人物、或いは面白さのための演算

 

 

 

今ひとつパッとしない主人公、聖騎士のアシュレ君。

強そうでも、弱そうでもない。

信念とか、豪快とか、脆弱とか、そういった光る個性をあまり感じない青年。

それでも、

よく怒ったり、笑ったり、泣いたり、照れたりと、忙しく動きまくる。

 

 

実に研究され、計算の下に産み出された、主人公として相応しい主人公だと思う。

 

 

そう、物語の中心となる主人公は、読者の視点に一番近い存在。

あえて際立った個性を持たせず、

でも、たまに感情があふれて情熱的に、

時には深く悩み、迷い、落ち込み、考え込む。

 

読者と一緒にね。

 

 

気が付けば、読者はこの主人公の感情と一体となって、物語に吸い込まれる。

作者が仕掛ける、実に巧妙にして高度なカラクリ。

 

 

あとアシュレ君、

ちょっとモテ期な感じでニクイ奴だ(笑)

 

 

 

 

 

 

 

本作のヒロイン、夜魔の姫・シオンさん。

美しくも人に非ず。

 

 

名作「ロードス島戦記」を覚えているかい?

どうしてみんな、ディードリットにあんなに夢中になっちゃったんだろうね?

感情はあまり表に出さないし、

何考えているか判らないのは、ハイエルフの彼女の自尊心が強いから?

それでも魅力的に見えて、彼女に釘付けにされちゃうのは、

人と非なる者にして、人と一部の価値観を共有できるミステリアスさがあるからかな。

 

 

主人公・アシュレが読み手の代行者だとすると、

まったく見ず知らずの世界に迷い込んでしまった読者を、

無意識のうちに繋ぎとめてしまう、魅力的で、鮮烈なヒロイン。

 

その行動は人間的なのか、いやはや非人間的なのか。

感情をあまり表に出さないのかと思えば、

内に秘めたる情熱的なものが、一気に表に溢れ出すこともある。

女性らしさ、気高さ、そしてミステリアスなれど何処か可愛らしさまでも感じる。

 

 

彼女はこの物語の、いわば案内役。

その魅力と共に、読者をどこまでも深いところへと連れて行ってくれる。

 

 

 

 

 

 

土蜘蛛の王を自称する、イズマのオッサン。

もしかしなくても、女の子の肌色成分が大好きなお方。

 

 

「俺を誰だと思ってる。この物語の主人公だぜ」

某人気ゲームに、こんな舐めたセリフを吐く名脇役キャラがいましたね。

同じシリーズの別の作品には、

「これはお前の物語だ」

と、主人公に言い放った渋いオッサンもいました。

 

 

よく出来た主人公と魅力的なヒロインがいれば、

素晴らしい物語が勝手に出来上がるというものではないでしょうね。

 

主人公らを最大限に輝かせ、

引き立てるために登場する人物。

謎に包まれつつも、いつも物事の真理を見つめており、

たまにウザくも、ここぞという時には助けてくれる。

 

そして地味に格好良い「年長者」の存在。

この重要なポジションを担うのが彼。

 

 

どんな作品にも、読者に伝えたいメッセージがある。

愛の素晴らしさなのか、

正義と悪の対比、その解釈なのか、

それとも、作品そのものの在り方についてなのか。

 

彼は、作者の代弁者。

無限に広がる創造された世界を、

明るく照らすも、混沌に落とすも、

自由自在にコントロールするために用意した、重要なカギのような存在。

 

 

おそらくは、

モデルも作者自身ではないかと思ったり、思わなかったり。

 

 

 

 

 

方程式の解は読者に委ねるスタンス

 

鮮明に創造された新世界。

その世界の中に存在するたくさんのサイン。

真新しい世界に迷わないように、丁寧に案内をしてくれるイラスト群。

綿密に計算されて息を吹き込まれた登場人物たち。

 

 

作る側が「面白いものを生み出す」ために、

あらゆる手を尽くして送り出した作品だと思うのですな。

 

そして、

 

これらのパーツの組み立ては、読者に全て委ねる。

読む側もいろんな楽しみ方を模索してくれ。

 

そんな作者の声が聞こえる気がしました。

 

 

 

 

 

 

 

 

さて、フェル公爵という男は、普段は読書をしても感想はほとんど書かない。

いろんな作品があって、たくさんの読者がいて、

その数だけ、人それぞれの感想があるわけだし、それで良いかなと……。

 

作者にとっても、

自分が産み出した大切な作品を、

いちいち読者にアレコレ言われるのは気に障ることもあるだろう、と。

 

 

 

でもね、

 

 

 

この「燦然のソウルスピナ」はね、

いろんな人に手に取って読んで貰いたいなと思って、今回のブログ記事にしてみた。

もし読んでみて、全然ツマラナイじゃんと言うなら、

騙してんじゃねーよって、

フェル公爵をボロカスに罵倒してくれてもかまわない。

 

 

この作品はね、

まぎれもなく、これからの新しい時代を担うファンタジーの代表作だと思うわけ!

 

 

2017-05-20 21:55:00

燦然のソウルスピナ


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